「最近のBLは設定が多様化している」なんてレベルじゃありません。今回ご紹介するのは、なんと「サワガニと人間の恋」です。
サ、サワガニ?
タイトルからして情報量が多いですが、読み進めるとこれが驚くほどに「純愛」で、すーっごく面白かったです。
あらすじ
コワモテ風俗店店長攻め × 人間の愛に憧れるサワガニ受け
サワガニのチャロ(オス)には、壮大な夢がありました。それは、人間になって愛されること。
ある日、念願の「人間になる素」を飲んで変身したチャロは、通りすがりの男・龍治に拾われます。強面で風俗店の店長を務める龍治との、一人と一匹(?)の奇妙な同居生活。
しかし、不完全な変身のせいでチャロの手は鋭いハサミ(シザーハンズ)のまま。さらに吐き出す体液も「カニミソ」という、あまりにも強すぎる蟹要素を抱えたままの生活に……。龍治はそんなチャロを気味悪がりながらも、不器用に見守り、受け入れていきます。
チャロの天真爛漫さに孤独を癒されていく龍治と、自分を「個」として愛してくれる龍治に惹かれていくチャロ。しかし、チャロには逃れられない「蟹としての運命」が待ち受けていました。
「なんだこのあらすじ……」
あらすじの情報量が多すぎる。
まず、設定のインパクトが凄まじいです。
「手がハサミ」「体液がカニミソ」という、一見するとギャグにしか思えないキーワードの引力が凄まじい。その強すぎる引力に負けてしまいポチってしまいました。どうやったらこんな設定おもいつくのでしょうか。
そして読み進めていくと脱帽。このサワガニ設定が見事に生きています。
例えばチャロは川辺にやってくる人間たちを見て、生殖だけじゃない愛を囁く行為に憧れている。
…なんだこの導入。マジですか。
その他にも、「ミミズ大好き!」というチャロに、「お前とは絶対キスしねぇ」とボヤく龍治。
お風呂に入ろうとするチャロに、「茹で蟹になるぞ」とツッコむ龍治。
こういう設定を生かした掛け合いが散りばめられていて、人間の世界のことをよくわかっていないチャロがホストの広告の歌を口ずさんだりするのも面白いです。
「中身がカニでも、愛せますか?」カニという異形を受け入れる攻め
自分でこの見出しを書きながら、何を言ってるんだ?と混乱してきました(笑)
この設定が単なるギャグで終わらないのは、攻めである龍治の「受け入れる力」が尋常ではないからです。
普通、人間に変身するカニを受け入れられますか?受け入れられませんよね?
風俗店店長という荒んだ世界に身を置く彼が、人間に変身する異形の存在を「そういうもんだ」と受け入れてしまう。この規格外の包容力(?)といっていいのかわからない諦め癖が、物語に不思議なリアリティと説得力を与えています。
龍治はチャロにツンツンした態度をとるのですが、いなくなったらいなくなったで心配で探し回ります。
この龍治の不器用な優しさに、読者はいつの間にかカニと一緒に恋に落ちてしまうのです。
設定が強すぎるけど、多分言いたいことはそこじゃない
この物語の本質は、社会の隅っこで生きる「孤独な者同士」の交流にあります。龍治は愛や恋を信じていません。暗い過去を持ち世の中の隅っこを歩く龍治と、人間になりきれないサワガニのチャロ。
「普通」からはみ出してしまった二人が、種族の壁を超えて寄り添う姿は、王道じゃないからこその尊さがあります。
「最期はサワガニに戻して」
時間というタイムリミットを示唆するこのセリフですが、カニとの恋なはずなのに、不思議と切なくなってくるストーリー構成に引き込まれてしまいます。
まとめ:愛の形を「カニ」で試される、純愛物語
この見出しも自分で書いていてよくわからなくなってきました(笑)
結末がどうなるのか全く予想がつかなかったのですが、後半は泣きながら読んでいました。
この設定で泣いてしまうことある?あるんです。
最後まで愛おしくてたまらなくなる、そんな不思議な作品です。
気になった方はぜひ読んでみてください。



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